赤ちゃんから大人まで、歩行発達が示す人間の可能性。発達過程から見る歩行のプロセス 〜人生を変えるウォーキング教室〜

歩行の発達プロセス

 

僕たち人間にとって、歩くという行為は日常的で当たり前のものです。でも、この当たり前の動作を身につけるまでには、実は長い時間と多くの努力が必要なのです。

生まれたばかりの赤ちゃんは、自力で体を起こすこともできません。それが徐々に成長して、這い這いをし、つかまり立ちをし、よちよち歩きをして、やがて自由に歩けるようになっていきます。

この「歩く」ための発達プロセスは、人間の成長過程を凝縮したものと言えるでしょう。

1. 歩行の発達プロセス

歩けるようになるための7つの段階

人間が歩けるようになるまでには、主に7つの重要な段階があります。

  1. 定頸(首が座る)
  2. 寝返り
  3. お座り
  4. ハイハイ
  5. つかまり立ち
  6. 伝い歩き
  7. 独立歩行

これらの段階は、順序立てて一つずつ達成していく必要があります。各段階をしっかりと踏むことで、歩くために必要な筋肉や神経、そして脳が適切に発達していきます。

例えば、首のすわりの段階を考えてみましょう。

赤ちゃんが首をすわらせるために、頭を上げようと努力を重ねます。この動作を繰り返すことで、首や背中の筋肉が鍛えられていきます。同時に、「頭を上げる」という動作を脳が学習し、それに応じた神経回路が形成されていきます。

この過程は、身体と脳の両方を同時に発達させる、非常に効果的な活動です。

そして、この発達過程は決して容易なものではありません。赤ちゃんは何度も失敗し、何度も挑戦を繰り返します。でも、その度に少しずつ上達していきます。

この少しずつ成長していく過程こそが、実は脳にとって最適な刺激となり、さらなる発達を促すのです。

発達段階について

ここで、「発達段階」について少し詳しく見ていきましょう。

発達段階とは、人間の成長過程を段階的に区分したものです。この分野で広く知られている理論の一つに、スイスの心理学者ジャン・ピアジェが提唱した認知発達理論があります。

ピアジェは子どもの発達を4つの段階に分けました:

  1. 感覚運動期(0〜2歳)
  2. 前操作期(2〜7歳)
  3. 具体的操作期(7〜11歳)
  4. 形式的操作期(11歳〜)

この中で、歩行の発達に最も密接に関係するのが「感覚運動期」です。

この時期、赤ちゃんは感覚と運動を通じて世界を理解していきます。つまり、「触る」「見る」「聞く」といった感覚と、「動く」という運動が密接に結びついているのです。

例えば、ハイハイの段階を考えてみましょう。

赤ちゃんは自分で動くことで、今まで見えなかった景色を見ることができるようになります。新しい物を見つけると、その方向にハイハイで進もうとします。

これが「興味」と「行動」の始まりです。そして、この「興味」と「行動」の繰り返しが、脳の発達を促進していきます。

新しいことを学ぶたびに、脳内では新たな神経回路が形成されます。これは、未開の地に新しい道路を作っていくようなものです。最初は細い一本道だったのが、使えば使うほど太い道路になっていきます。

このようにして、少しずつ「歩く」という複雑な動作のための「神経ネットワーク」が脳内に形成されていきます。

立てるようになるには発達段階を踏まえるのが大事

「立つ」という動作は、一見単純に見えるけど、実は非常に複雑な動作です。

重力に逆らって体を支え、バランスを取り続けるためには、多くの筋肉と神経の協調が必要です。

そのため、発達段階を一つずつ着実に踏んでいくことが非常に重要になります。

例えば、「お座り」の段階を飛ばして「立つ」ことはできません。なぜなら、お座りの段階で養われる体幹の筋力や平衡感覚が、立つためには不可欠だからです。

この原理は、大人の学習過程にも当てはまります。

新しい技術や能力を身につける際、基礎から順を追って学んでいくことが大切です。プログラミングを学ぶ場合は、まず基本的な文法から始めます。料理を覚える場合は、包丁の使い方から始めます。

このように一つずつステップを踏んでいくことで、しっかりとした基礎が形成されます。そして、その基礎があるからこそ、より高度なことにも挑戦できるようになるのです。

「歩き方がおかしい、正しい歩き方を教えて欲しい」

と相談されることがよくあります。

実は「これが正しい歩き方」という唯一のものは存在しません。なぜならその人が歩く場所は家の中かもしれないし、道路かもしれません。裸足かもしれないし、スリッパを履いているかもしれないし、履き慣れた靴を履いているかもしれません。要はその時その時で正しい歩き方は無限に存在するのです。

だから「この歩き方が正しい」と信じて歩くのは実はあまり意味のないことになります。

そこで登場するのが発達段階です。発達段階の最初は首のすわりです。通常の大人なら首は座っているだろうと考えがちですが、意外や意外、首のコントロールがうまくできていない人が数多くいます。

実際にそういった方は首のコントロールを行うだけで抜群に歩きやすくなります。

具体的に見て欲しいポイントは

  • 盆の窪(首の後ろの中央にある少しくぼんだ部分
  • 肩と首の交わる付け根の部分

この2か所が横から見て地面に対して垂直かどうかです。

この2点が垂直でなく前に傾いていたり、後ろに傾いていると首が座っていない状態となります。

まずはこの2点が垂直かどうかを確認してほしいですね。

歩行の発達プロセスは、人生における学習や成長のプロセスを反映していると僕は考えています。

一歩一歩、着実に。 失敗を恐れず、何度でも挑戦を続ける。 そうやって少しずつ前に進んでいく。

このような過程こそが、人間の成長と学習の本質なのかもしれません。

僕たち一人一人が、今どの段階にいるのか、そして次の段階に進むためにどのような挑戦が必要なのかを考えることは非常に重要だと思います。

自分のペースを大切にしながら、一歩一歩着実に前に進んでいくこと。それが、驚くような成長につながります。

日々の小さな一歩が、やがて大きな変化をもたらす。そんな意識を持って、今日もまた新たな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?

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