パソコンに向かって仕事をしていると、いつの間にか肩が前に出て、背中がグニャッと丸まっている。一生懸命背筋を伸ばそうとするけど、なんだかしっくりこない。こんな経験ないだろうか?
実は、一般的に言われている「正しい姿勢」には、大きな矛盾がある。
僕らが座るとき、体は重力と戦っている。その戦い方は、まるで床から天井に向かって真っ直ぐ伸びる線のように。でも、一般的な椅子のサポート機能は、この自然な力の向きと合っていないことが多い。
一般的なサポートの問題点
例えば、よく見かける腰のサポートクッション。確かに腰を支えているが、その力の向きは背中から前に向かって水平だ。重力に抗って上を向いている僕らの体を、横から押しているようなものだ。これは本当に効果的なのだろうか?
お尻が前に滑るのを防ぐために、座面を後ろに傾ける設計もよく目にする。でも、これにも問題がある。お尻は水平に前へ滑ろうとするのに、座面は下向きに沈んでいる。まるで滑り台を逆さまにしたような状態だ。
新しいアプローチ
「では、どうすれば良いのか?」
その答えは、意外なほどシンプルだ。
首の後ろを触ってみてほしい。そこに少し出っ張った骨を感じるはず。これが第七頸椎。そこからもう少し上にある出っ張りが第二頸椎だ。この2つの点を結ぶ線を、床に対して垂直にする。
この2点が垂直になるように背中や腰は後ろに倒れても問題はない。後ろに倒れた部分を下からサポートする。
そして最後に、お尻の骨(坐骨結節)の前に小さなサポートを入れる。これが前滑りを防ぐ決め手になる。
今すぐできるシーティング
「専用の椅子を買わないといけないの?」
そんなことはない。工夫次第で、身近なもので代用できる。それはタオルだ。
タオルを2本用意して、1本は腰の下に、もう1本は座面の前の方に置く。たったこれだけでも大きく座りやすさが変わるはずだ。
最も大切なこと
大切なのは、体に働く力の向きを意識すること。重力に逆らうのではなく、うまく付き合っていく。それが楽な姿勢を保つコツだ。
ただし、どんなに良い姿勢でも、長時間同じ姿勢を続けることは避けたい。人間の体は動くようにできている。30分に1回は立ち上がって軽く体を動かす。水を飲みに行ったり、窓の外を眺めたり。こうした小さな動きの積み重ねが、結果的に体への負担を減らしてくれる。
姿勢を意識することも大切だが、それ以上に大切なのは、定期的に体を動かすこと。これこそが、快適な座り心地への近道なのだ。