「もうちょっと楽な姿勢があるはずなのに…」
パソコンに向かって仕事をしていると、いつの間にか背中がグニャッと丸まって、肩がガチガチになっている。きっと誰もが一度は経験したことがあるのではないだろうか。
座るという基本動作の難しさ
座るという動作は、人間の活動の中で最も多く行われる基本動作の一つだ。朝起きて食事をする時も、通勤・通学の電車やバスの中でも、仕事や勉強をする時も、夜にくつろぐ時も、僕たちは座っている。
でも、その「座る」という動作、実は現代人にとって最も難しい動作かもしれない。
人類の歴史から見る座位の変化
僕らの遠い祖先である石器時代の人々は、今のような長時間の座位作業はほとんどしていなかった。彼らの生活は、狩りや採集のために歩き回ることが中心だった。発達段階としては、寝返り、這い這い、座位、そして最後に立位・歩行という順番で十分だった。歩けるようになれば、それで人としての基本的な動作は完成だったのだ。
現代社会における座位時間の増加
スマートフォンを見る時、パソコンで仕事をする時、食事をする時、電車に乗る時…私たちの生活は座る機会で溢れている。そう、現代人は「歩く」以上に「座る」ことが多いのだ。
この変化は人類史上、かなり急激なものだった。わずか数百年の間に、私たちの生活様式は劇的に変わった。特にここ数十年のデジタル革命は、座位時間を爆発的に増やした。
2つの座位タイプを理解する
1. 作業座位
作業座位は、何かをする時の座り方。食事をする時、パソコンに向かう時、楽器を演奏する時など、活動するための座り方だ。一般的に「良い姿勢」と言われる─骨盤を立て、腰椎を前弯させ、顎を引いた姿勢─これが作業座位の状態だ。
2. 安静座位
安静座位は文字通り休む時の座り方。テレビを見る時、電車に乗っている時など、リラックスするための座り方だ。
赤ちゃんから学ぶ自然な座り方
赤ちゃんの座り方を思い出してみてほしい。遊びに夢中になっている赤ちゃんを見ると、背筋をピンと伸ばしているわけでもなければ、極端に骨盤を倒しているわけでもない。ただ自然に、骨盤の上に背骨が乗り、その上に頭が乗っているだけ。これこそが、本来の安静座位なのだ。
座位安定化エクササイズ
1. 安静座位
- 椅子に深く腰掛ける
- 目を閉じて自分の体の重さを感じる
- 呼吸に合わせて体の緊張を解いていく
- 3分程度行う
2. ペルビックチルト(骨盤の前後運動)
- 椅子に座ったまま、お尻を前後に動かす
- 前に倒すとスッと背筋が伸び、後ろに倒すとクッと丸まる
- この動きを5回ほど繰り返す
3. 肩甲骨ほぐし
- 両手を肩に置く
- 肘を前後に動かす(グルグル)
- 10回ほど回す
- 逆回りも10回
4. 首のストレッチ
- ゆっくりと首を右に傾ける
- 10秒キープ
- 左も同様に
- 前後も同じように
まずは歩くことから始めよう
ただし、これらの姿勢やエクササイズに取り組む前に、まずは日々歩くことから始めるといい。なぜなら、歩くために必要な筋肉やバランスの調整機能はそれぞれ個別のエクササイズよりも多く必要なのだ。だから歩くことから始めることで全身を満遍なく連動して使うことができる。
僕らの体は本来、とてもシンプルな原理で動いている。難しく考えすぎず、赤ちゃんの無邪気な動きから学んでいく。それが、現代社会を快適に生きていくためのヒントになるのかもしれない。
次回は座るための椅子とシーティングについてお伝えします。